10 NPOのマーケティング1「お客様志向」

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NPO法人イー・エルダー

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この「NPOのマネジメント」シリーズは、今回の“マーケティング”をご紹介いたしたく、企画したと申しても過言ではありません。ご承知の通り、“マーケティング”は、企業が利益追求、市場戦略として策定し、実行しています。

NPOは自らの理念、社会的使命、サービス、アイデアなどが広く社会に受け入れられることを目的に活動しています。企業の市場戦略としてのマーケティングを応用し、より効率的に、より効果的に目的を達成することが【NPOのマーケティング】です。このマーケティングこそが、NPOの自己存続と成長を可能にする基本的な機能であると言って良いと思います。

しかし、残念なことに、『利益の確保』とか、『営業活動』という言葉は、NPOに馴染まないとして、これを忌み嫌ったり、軽視されている人が多く見受けられます。

ここではNPOの経営にとりまして、最も重要な“NPOのマーケティング”の機能を三つに絞りご説明します。

  • 一つ目は、「専任の営業機能」を持つこと
  • 二つ目は、お客様と「緊張関係」を保つこと
  • 三つ目は、排他的(企業、行政、他のNPOに真似できない、逆説的に申せば、真似したくなるような)で、付加価値の高い商品・サービスを提供すること(次回に、ご説明)

1.【専任の営業機能】を持つこと

NPOがいかに素晴らしい社会的使命を遂行する組織といえども、活動資金を自ら稼ぎ出すのでなければ、存続し発展するはずはありません。「崇高なボランティア精神でやっている」のみでは不十分、「単なる儲け主義だ、NPOを食い物にする」という意識を早く変えることです。

片手間に営業活動を行なっている程度では、成果は得られません。お客様(個人、企業、団体、行政など)にNPOのサービスや企画に満足し、メリットを感じて購入・寄付・契約いただくためには、【専任の営業機能】を果たす人材の配置が必須です。

その専任の営業スタッフがお客様の基本情報を事前調査し、ニーズや問題点を粘り強く聞き出し、掘り起こして、自己の組織の特性やサービスの特徴・付加価値などを勘案し、お客様からこんな提案が欲しかったといわれるような創意工夫を凝らした解決策や企画案の提案活動を行います。

「そんな余裕も、人材もいない」と聞こえて来そうです。確かに、営業のセンスもスキルも意欲もある成員は簡単には見つからないかもしれません。また、短期に育成も困難です。

1月15日号の「マネジメントとリーダーシップ」の中で、若者(学生)、主婦、高齢者の活用をお薦めしたことをご記憶でしょうか。正に、営業経験のある高齢者にお手伝いをいただくと良いと思います。恐らく、このような営業スキルを持つ高齢者は、自分の経験がNPOで役立つとは夢にも思っていないと思います。皆様の事業目的や理念に共感を持っていただき、営業を引き受けていただければ、必ず成果が出ます。

また、障害者関連のNPOであれば、障害者に営業活動を行なっていただくことが考えられます。一見弱みを見せるかのようですが、障害者自らが自分たちのサービスを訴えることは大変な『強み』になります。説得力があります。
ひとつだけアドバイスがあるとすれば、「本人が焦らず、1年間は営業活動を忍耐強く継続すること」、「周りの人々は感謝の気持ちで温かく応援し続けること」が肝要です。

行政には、泥臭い話ではありますが、何回足を運んだか、名刺を何枚渡したかの世界がありました。NPOと行政との協業の成果が出て来たとはいえ、多くの役所の方々の意識はNPOをコスト削減の手段としか見ていないように思われることがあります。
しかし、昨今は、本音で良質のアイデアの提案を期待していることも事実です。アイデアを売り込む絶好のチャンスと言えます。
また、新しい行政を模索している若い担当官もかなり見受けるようになりました。このような担当官に巡り会え、企画案が良ければ上司を説得し、議会を動かし、予算を付けてくれることも少なくありません。

2.お客様と【緊張関係を維持すること】

お客様の満足度は時間の経過や環境の変化とともに、確実に低下して行きます。お客様とのより良い関係を築くために、それまで以上の営業努力と組織をあげてのアフター・マーケティングが必要です。即ち、良い意味での〔緊張関係の維持〕です。

企業との関係では、企業にとってNPOと連携することのメリットがさらに高まり、その寄付・協賛や業務委託契約が継続されるように、NPOから定期的な成果報告、新しい専門的情報、創造的・付加価値の高いサービスの開発などをタイミングよく提供し続けます。マスコミの掲載記事、事業の成果(お客様の声など)は客観的なデータとして価値があります。また、自分が企業の担当者であったら、その寄付や業務委託契約を継続するだろうかを常に考え、契約打ち切りにならないように行動する習慣を身に付けることが必要です。

個人的なお客様には、企業や行政では真似のできない心のこもったサービスを提供し続けているかを自問自答する。例えば、お客様の満足度を定期的に調査し、サービスの向上につなげているか? お客様からのクレームを現場の瑣末な問題とせず、迅速に原因の把握と再発防止策を経営の問題として議論しているか? トラブルは処理の仕方次第でビジネス・チャンスに変ることが結構あります。リピーターの満足を得られるサービスがひとつの目標となります。

行政との関係では、一旦契約関係ができると継続する傾向はありますが、油断せず、この分野の仕事はこのNPOにしか任せられないとの信頼を得るまで、専門性を磨き新しい企画を提案する努力を続ければ、継続の可能性は高まります。新しいアイデアや改善案を次年度の事業計画時期に間に合うようにタイミングよく提案することも重要です。国の新しい施策の予算を獲得して地方自治体が実施することが少なくありません。情報をこまめに収集し、対策を講じておくことをお奨めします。
また、毎年予算が削減されたり、施策の変更、更に担当官の異動などがありますので、緊張関係の維持は常に必要です。

 


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