19 NPO経営の自己評価

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NPO法人イー・エルダー

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従来の社会的な制度、施策、慣行が満足に機能しにくい社会環境において、社会的使命を遂行するNPOの存在意義、また、行政と企業に比肩する第三のセクターとして期待される持続可能な経営のあり方について、これまでに数々の実践的な提案・提言をさせていただきました。

最後になりましたが、「NPO経営の自己評価」としてまとめさせていただき、昨年11月から発信させていただきました「NPOのマネジメント」を終了させていただきます。

☆ 使命が全てに優先

NPOの使命(事業目的や理念)は、企業や行政では解決が得られない社会的課題に対する解決策を提供し、目標や成果を達成することにあります。時に、企業から直接、あるいは、中間団体やエージェントのような組織から、紛らわしい魅力的な事業が持ち込まれことがあります。ここで重要なことは、いかに魅力的だからといって、単に利益を得るために、組織の使命や定款をおろそかにしないことです。自己の使命や定款を損なうような事業の対応には、極めて慎重な検討が必要です。

そのために、私たちは、常に組織の使命を問い、安易な妥協を排し、どのような事業をすべきか否かを組織の使命で判断するという強い自覚が必要です。この使命で判断することが、社会からの信頼を得る全てであることを銘記すべきです。また、社会環境の変化やお客様のニーズを常に把握し、必要であれば使命や定款の見直し、変えるか否かの決定に組織をあげて取り組みます。

☆ マーケティング志向

NPOは自らの使命、製品やサービス、社会的課題の解決策などが広く社会に受け入れられることを目的に活動しています。企業の市場戦略としてのマーケティングを応用し、より効率的に、より効果的にこの目的の達成を考えることが「NPOのマーケティング」です。このマーケティングこそが、使命の達成と自立を可能にする基本的な機能です。

残念なことに、「利益の確保」とか、「営業活動」という言葉は、NPOに馴染まないとして、これを軽視したり、忌み嫌ったりするNPO関係者が未だに多く見受けられます。トップが率先してNPOをマーケティング志向に変える経営を推進しない限り、永遠に組織の体質は変わりません。

繰り返しますが、私たちは企業や行政では解決が得られない社会的課題に対する解決策を提供し、成果を達成することが使命です。プロフェッショナルな創造的、専門的、心のこもったサービスで一日でも早く「WinWinWin」の信頼関係を築き、自立する必要があります。いつまでも、行政の下請け組織に甘んじていてはならないと思います。対価・責任・保証などの屈辱的な条件下でのビジネスはきっぱりと断る勇気が必要です。

☆ 狭義の自己評価

重要な自己評価は、次の4つのポイントです。

(1) 理事会の「ガバナンス」
理事会(理事)は社会に代わって、組織が使命(事業目的・理念)を誠実に遂行しているかを監視する機能・責任を持っています。非常に重い責任です。
理事会は理事本人が出席し、少なくとも年2回開催し、次の課題等を審議します。

1) 使命の見直し、長期的な組織の方向性
2) 戦略的事業計画、事業収入、新規計画などの経営(活動)方針の策定
3) 権限集中やワンマン体制、相互牽制システム、不正などの団体や会員の監視
4) 情報開示・透明性の確保と推進
5) リーダーの卓越したマネジメント(理事自身が年度ごとに、自己評価)

(2) 「効率性」

1) 目標と成果管理(マーケティング志向)
漠然と活動を続けている団体と、達成したい成果目標・評価基準を明示してその達成に向け努力を重ね、当初の目標の達成度合や成果を評価して、改善を積み重ねてゆく団体とでは、短期間で雲泥の差となって現れてきます。

2) 経営資源、ITの活用
ITはNPOの経営資源のひとつです。電子メール、電子会議室、メーリング・リスト、データベース管理など最新ITを活用することにより、より柔軟で効率的な組織運営が可能です。企業や行政とのコラボレーションには欠かせない経営資源です。

(3) 「健全性」

1) 事業の健全性
使命との整合性、直接(プログラム活動)費と間接(管理)費の割合、資金調達の実現可能性、成員の質と量的維持、次期新規事業の計画性など。

2) 財務の健全性
応分な給与・報酬、プログラム活動費と管理費の割合、事業ごとの収支計画管理、寄付金の使途、予算・会計管理と対監査性など、財務基準の作成と遵守。

(4) 透明性、情報開示

主務官庁への事業報告書提出だけでは十分ではありません。情報隠しスキャンダルの例をひくまでも無く、NPOは社会からの信頼が全てです。事業(活動)経営全般について、成員と外部に対し積極的に分かり易く情報を開示します。積極的な情報開示は組織の透明性を高め、結果として社会からの信頼が得られます。特に、補助金や寄付金の提供者には個別事業報告書を報告すべきです。

☆ 客観的な社会からの評価

行政が住民の、企業が株主の、NPOは社会の各々の満足を得ることが使命であると言えます。これまでに述べた自己評価に加え、困難ではありますが、顧客や支援いただくスポンサーの満足度、リーダーに対する信頼度、組織・成員・ボランティアの士気、マスコミの評価といった「社会からの信頼度」を示す評価を定量的(不可能な場合には定性的)に把握・分析し、定期的にその動向を見守ることが必要であります。

 


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