ヤマト福祉財団 理事長 小倉 昌男
私は、財団理事長を引き受けて、始めて福祉のことを知ったが、福祉と経営とは無縁の世界と思われていた。そこで知ったことは、障害者の得る賃金は、月平均して一万円という低いものであり、しかも誰もそれをおかしいとも思わず、仕方が無いものだと受け入れていた実態であった。
私はそれを許せないと思い、それは不当であると訴え、賛同する人が増えていった。
障害者の賃金が低いのは障害者の施設を運営する人たちに経営の知識が不足していることに起因していると思い、ヤマト福祉財団の事業として経営のパワーアップセミナーを実施して今日に至っている。
日本は社会主義ではなく、資本主義の経済体制のなかにある。福祉の問題も、障害者の賃金を上げようと思ったら、市場原理を前提として考える必要がある。福祉の問題も、経営との融合を考えないで答えを出すことは出来ないのである。
最近NPO法人が注目を集めている。とくに福祉の世界に相応しいものとしてこれからは更に増えていく可能性がある。しかし世間には誤解している人も多いようである。
NPOというのは、非営利でなければいけないと思っているとしたらそれは間違いである。営利を目的とはしないが、組織の運営については、資本主義の長所を取り入れるなど、目的設定のやり方や、目的の実現のために効率のよい手法を開発するなど、市場主義のよいところを取り入れて、本来の目的の達成目指して頑張って欲しいと思っている。
私はNPO法人の運営に携わったことが無いから実体は全く知らないが、考えられる問題と、解決の方法について、想像を交えて提案してみたい。
NPO法人が直面すると思われる最大の問題は、資金不足ではないだろうか。非営利であれば見返りが期待できないから、出資する人は無いだろう。では篤志家の寄付を当てにするしかないのだろうか。でも寄付を当てにしていたら、いつまで経っても資金は集まらないだろう。
篤志家の中には、寄付はしたくないが、無配当の出資ならしてもよいと考えている人もいないことは無いと思う。つまりエンジェルである。
エンジェルに対しては、配当はないけれど、事業の目論見書や詳細な計画書、資金運用の予定など、資料を揃えて配布する必要がある。
資金と並んで不足していると想像されるのは、人材の不足である。
人材は資金よりも集めやすいのではないかと思う。経験を持ち、時間もある人で、ボランタリーで働きたい人は世の中には結構多いものである。
問題は、どうして必要な人を見つけ出すことが出来るかである。
それは、その団体がふだん広報を遣っているかどうかにかかっている。
ひとは金のみによって働くのではない。人のために役にたちたいと考えているひとは多いものである。
またお金ではなく、時間を有意義に使うことに満足感を求めている人もたくさん沢山いる。
日本でもNPOが主体となる時代はすぐそばにきているのではないかと思うのである。
※ 特別寄稿をお寄せいただいた小倉昌男様のご紹介
1924年12月13日東京生まれ。東京大学経済学部卒業。48年、大和運輸(現ヤマト運輸)に入社。71年社長、87年会長に就任。「クロネコヤマトの宅急便」の事業開発で当時の運輸省や郵政省と闘った経験から、積極的な「規制緩和」「規制撤廃」の実行者として知られる。
93年、ヤマト運輸200万株(当時の時価総額24億円)を投じ、ヤマト福祉財団を設立。95年、会長退任後は、財団の理事長職に専念。障害者の雇用創出を目的としたパン製造、販売会社「株式会社スワン」を設立、スワンベーカリー銀座店を開店。各地につぎつぎとオープン。その他、障害者のノーマライゼーション支援にあたっている。
著書に、『小倉昌男経営学』(1999年10月、日経BP社)、『経営はロマンだ!』(2003年1月、日経ビジネス人文庫)、『やればわかる やればできる』(2003年5月、講談社)、『福祉を変える経営』(2003年10月、日経BP社)



