テーマ2 NPO発展期における「リスクマネジメント」

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NPO法人イー・エルダー

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2003年12月1日


NPO(特定非営利活動法人)の発展段階(創業期→発展期→安定期→円熟期)に応じて「リスクマネジメント」の内容が大きく変わってきます。傑出したリスクマネジメントのリーダーは徳川家康らと申しましたが、創業期のリスクマネジメントの達人です。

今回は、多くのNPOが直面していると考えられる発展期を中心とした「リスクマネジメント」ついて、皆さまと一緒に考えてみたいと思います。

精神的支柱である「理念と目的」が明確になり、最低限の成員も集まり、具現化方策(事業・活動計画)が策定・実行されて、地域社会からも受け入れられ、何とか社会的事業を継続できる見通しが立つようになった。さあ、これからさらに発展させようという時期を想定願います。

NPOの生命線は、社会的事業の遂行、つまり、個々の活動の継続性ということになると思います。NPOには、原則「非課税」と「税制控除」認定(極端に少数ですが)という大きなメリットがありますので、他の組織と比較し、継続しやすい面はありますが、同時に他組織からみると、うらやましい利点を持つ魅力のある団体であるといえます。

そこに、外部からのリスク、内なるリスクも多いと思います。それぞれご自分のNPOの組織・事業・個々の活動・成員等の特性を勘案し、どこに、どんなリスクがあるかを検討し、活動の継続性にインパクト(契約の解約、損害額の大きさ、発生の頻度、代替可能性の有無など)のあるリスクを書き出し、実現可能な対応策を順次整備して行くことが肝要です。

NPOの発展期における「リスク」の事例として、「組織運営」とかなり重なりますが、以下のような顕在的・潜在的なリスクがありませんでしょうか。

  1. 情熱と強力なマネジメント力を持つ創業者(発起人)の健康不安・情熱喪失
  2. 特定の個人に権限や責任が集中し過ぎている
  3. 所要の成員不足
  4. 約款の無理な解釈による高収入の魅力ある事業(活動)の受託
  5. 他企業・団体との競争力不足
  6. 委託元・寄付元1社からの収入に依存度が高いと継続性に不安
  7. 関係法律・規範・ルール違反
  8. 不正経理・現金管理の発生可能性
  9. 情報システム(パソコン、事務機器)のトラブル発生の可能性
  10. 外注先・仕入先からの供給安定性の不安
  11. 必要性のある保険契約に無関心(考えもしなかった)
  12. その他、たくさんあると思います

対応策は、それぞれのNPOの事業(活動)やリーダー・役員の判断により違いが出て当然です。ご参考までに、実際に、効果をあげている「リスクマネジメント」の事例をご紹介します。

事例1: 総会または、理事会で、【意思決定機関設置】(役員で構成)の承認を受ける。定期的(例えば、月2回)に会議開催、議題(承認/検討/報告案件)の募集、結果の議事録化と開示を行う。

効果:約款にない事業受託、無理(実力以上・過酷な負荷)な事業受託、事業計画のない(作業仕様書や管理費のない)事業受託、契約書・覚書等の不平等契約、不明朗な経理・会計処理、HP等での外部への誤ったメッセージ発信等のリスクに対して、複数の役員の監視や対策案提示、相互牽制、開示を前提とした正論が通り、リスク発生の防止に大きな効果をあげている。

事例2: 【CS(顧客満足度)の徹底】 単に、製品・サービスの提供で終わりにせずに、お客様が実際に、生活の質的向上や社会参加に貢献できているかを調査する。

効果:お客さまの満足度、不満、要望等を評価・分析し、サービスや商品の改善を続けることができ、その社会的存在価値喪失のリスクを未然に防ぐ。また、付加価値の追加や新しいサービスの企画・開発にヒントが得られる効果がある。

事例3: 【委託元・寄付元の多様化】委託先企業や行政からの多額の委託・寄付金が入り、総収入に占める収入の割合が90%を越えることすら起こります。企業にしても、行政にしても、単年度契約が原則です。2年、3年と継続していただくと、いつまでも収入が続くと錯覚し、努力を怠りがちです。
そこで、委託元・寄付元との【緊張関係】維持(先進情報の提供や創造的企画案の提案)、他の企業・行政の開拓、不特定多数のお客様を対象とするサービスの新規開発を行う。

効果:多額な委託・寄付金が突然減額、または、中止となった場合のリスクが発生しても、他の自立化方策でカバーし、最小限のインパクトで乗り切ることができる。さらに、リスク防止対策で、多様・多角化が実現し、活動が強化・安定する。

事例4: 【外注先・仕入先の複数・多様化】意外と気づかないかもしれません。例えば、ある作業を企業か団体に発注しているとします。1カ所だけにお願いしていると、その発注先が、解散・倒産したり、民事再生法を申請し、事業を整理縮小したり、不幸なことに経営者が交通事故で事業の継続ができなくなったりします。現実に発生したリスクです。

効果:複数の外注先に発注していたために、その後の活動の継続に全く支障はありませんでした。また、この活動は、各地域の経済活性化や環境リサイクルの促進、障害者の雇用創出にも役立っています。

以上述べましたように、「リスクマネジメント」は「組織運営」とかなり重なりますので、日常活動を活性化させるという点でも有効です。自己の日常に内在するリスクを知るための作業ではあるのですが、日常の活動を改めて認識し確認することになり、リスクの排除やリスクへの対応策を講じるだけでなく、活動そのものを見直し、改めて活動の社会的な意義、強い動機づけ、チームワークの向上などの効果が図れることが少なくありません。(Rel.1201)

 


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