11 NPOのマーケティング2「高付加価値」

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今回は、NPOの経営に不可欠なマーケティング機能、「高付加価値」と題して、商品・サービスの創出とお客様への提供における工夫について、つぎの視点から考えます。

◇商品・サービスそのものの価値
◇心のこもったサービスの価値
◇社会システムの実現

1.商品・サービスそのものの価値

排他的で(企業、行政、他のNPOに真似できない)、付加価値の高い商品・サービスをもつことに異論はないと思います。まず、「NPOは企業とは違う。所詮、排他的な商品の開発やアイデアの創出は無理だ」という意識を変えることです。
もともと、発起人が「この社会的ニーズや課題を絶対にこのように解決しなくてはならない」とか、「社会をこのような状況に変えなくてはならない」という強い思い(信念)や情熱に駈り立てられて活動を始めたわけです。その排他的なサービスをどの分野に見出すかを考えて見ましょう。

自分たちの身の回り(住民、家庭、地域、学校、団体、行政、企業など)で困っている社会的なニーズやシーズを立軸に、安全性、福祉・介護、教育・啓発、自然・環境、IT、差別・虐待、善意、温もり、手造り、地域や組織・成員の特性などを横軸において、課題に焦点を絞ります。
“市場が小さい・限定的”、“弱い”、“手が掛かる”、“専門知識・技術がいる”、“むらがある”、“季節変動が激しい”といって諦めている領域について、アイデアを創出し、組織的・統合的な解決策とその事業化を図ることになります。

事業開始後は、素朴な意見、専門性のある成員の意見、日頃のクレームの内容、お客様満足度調査の要望、他のNPOや企業がどのようなレベルの「サービス」をしているかを比較するベンチマークなどから、自己の「サービス」に新機能を加え、改善を重ねていくことにより、付加価値の高い「サービス」に進化させることが可能です。

2.心のこもったサービスの価値

長い引用になりますが、12月15日号で、「・・・経済合理性だけの活動ではなく、ボランティア活動(無報酬)でもない、心の内面から湧きあがる内発的なエネルギーの伴った社会的・公益的な活動となって発露されるようになります。
相手の喜びと自分の喜びが同化された心のこもった自発的なサービスに昇華します。大げさな表現ではありません。皆様も実感しておられること思います。この心のこもったサービスこそが、NPOの【新しい創造、価値を生み出す第三のサービス】の源流です。・・・」と申しました。

同じ「サービス」でも、そこに心のこもったサービスが付与されているか否かで雲泥の差が生じます。心のこもったサービスが付与されているだけでも十分に、排他的で、付加価値の高い「サービス」と言っても良いと思います。
この心のこもったサービスが組織風土として定着すると、やがて、お客様がリピーターとなり、クチコミによって新規のお客様が来られるようになります。お金をかけない素晴らしい理想的な宣伝と言えます。これが、【NPOの創造的な心のこもった第三のサービス】です。

ファーストフード店などでみられるスタッフの対応は高度にシステム化・マニュアル化され、お客様に一定レベルのサービスを提供できる優れものです。
しかし、お客様はスタッフの画一的な科白を聞いてもホスピタリティを感じません。科白ではなく心のこもった言葉や対応にこそホスピタリティマインドを実感することができます。
仕事の慣れやシステム化に伴う画一性によって「心のこもったサービス」は色あせるものです。

3.社会システムの実現

単独の組織(NPO)では実現不可能なことでも、多様な機能を持つNPO、企業、行政、団体が善意で参画・協業し、お互いの強みを結合させることで、〔社会システム〕としての「サービス」の実現を図ることができます。
利益や共通目的の実現で結合する業界団体、協議会、コンソーシアムではない、新しいタイプの“社会資本”をNPOによって実現させることが可能です。NPOが中核にならなければ、実現できません。

〔社会システム〕は、その参加がオープンであることも重要です。NPOは自己の開発したサービスやノウハウを積極的に公開し、多くのNPO、企業、行政、団体の参加や支援を得て始めて、社会から高い評価と認知を受けます。NPOがサービスやノウハウを独占し、優位性を保持するのではなく、積極的に公開し、他のNPOの参加や競合を促すことは、NPOの自立化や円熟した社会づくりにとって意義のある大切なことだと思います。

 


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