15 企業とのコラボレーション(協業)

イー・エルダーのロゴマーク

NPO法人イー・エルダー

ここから本文です。

 


NPOについて企業から、「頼りない。ボランティアと区別がつかない。戦略が無い。企業を理解していない。」など厳しい評価が聞こえてきます。一方、企業の中には、NPOを事業推進の重要なパートナーと位置づけ、NPOへの期待が強くなってきています。

数年前、社会貢献活動で先進的な外資系企業幹部が、「社会貢献活動は、【社会的投資】だ。戦略のひとつに、NPOとのコラボレーション(協業)を入れた。NPOの専門性、創造性を評価するもので、対価も十分支払う。」と語っていた。最近、他の先進的な外資系企業幹部が、「企業の行う社会貢献は【経済的利益と地域社会の利益を生むビジネスモデルへの長期的な投資】と定義したい。従って、ビジネスマインドたっぷりな【社会企業家】と一緒に戦い、戦利品を山分けして・・・が理想だ」と、きっぱり言い切っている。

企業は、NPOとのコラボレーションを単なる現金寄付や便利な下請、コスト節約機能として活用する社会貢献活動から、最近はCSR、環境、ダイバーシティ(多様性)・プログラム、研究開発など幅広く「社会的投資」、「戦略的事業計画」と定義するようになりました。NPOの位置づけが、戦略的な事業計画の重要な事業推進パートナーと大きく激しく変化しています。

そこで今回は、企業とのコラボレーションと題して、〔企業のNPO選定基準〕、〔基本はNPOの内なる経営努力〕、〔企業の特性と責任者の性格に合った提案の工夫〕、〔常に組織の使命は何かを問う〕のテーマで、その推進と注意点について考えてみます。

1.企業のNPO選定基準は厳しい

NPO側からすれば、使途を指定されない資金の寄付が理想であるが、いま時そのような寄付をしてくれる企業は少ない。企業はグローバルな大競争の過程にあり、NPOとのコラボレーションを新しいビジネスモデルと位置づけ、必死に模索している。

具体的には、

  1. 自社の事業戦略・方針に合致しているか
  2. 協業するメリットは何か
  3. 当該分野での実績(専門的能力、創造的企画力、社会の評価)があるか
  4. 経営者、マネジメントが信頼できるか
    その上で、
  5. 提案(事業計画/協賛・支援要請)内容を詳しく聞く、見る、評価する。
  • どのようなプログラムか(対象のクライアントの問題点とその解決方法)
  • 自社の事業戦略・方針に合致するか
    (自社技術・ノウハウ、商品・サービス、社員、資産などの活用)
  • 予算/費用の使い道は適切で明確か
  • 社会や公共にとっての意義は何か
  • 新規/創造的な提案か
  • 実現可能性はどうか
  • 自助努力はしているか
    さらに、

(6) 新しい情報や創造的な企画を継続して期待できるか
(7) 広報計画、マスコミへの訴求力はあるか
(8) 寄付金・委託金額が当該NPO収入に比べ大き過ぎないか。
(9) この提案の遂行を上回る他のNPOはあるか
(10) 契約期間を短期間で切れるか、と続く。

2.基本は、NPOの内なる経営努力

企業とコラボレーションを行うためには、先ず、NPO自身の内なる経営努力が必要であることがご理解いただけたと思います。企業と対等な立場での協業には相当の覚悟が必要です。屈辱的な単なる御用NPO、便利な下請先・出先機関、コスト節約機関では、NPOの持つ「第三のセクター」としての社会からの期待には応えられません。

これまでに、この「NPOのマネジメント」で再三にわたり強調して来ましたが、重要なことであると同時に、自己評価は改善と強化にも役立ちますので、繰り返します。

  • 自分たちの社会的使命(事業目的、理念)は何か
  • その使命のサービスの対象者とその対象者の問題点・課題は何か
  • サービスの内容はどうか(他のNPOに真似できない排他的で、高付加価値)
  • 心のこもったサービスを提供していると言えるか
  • 自分たちの組織や活動地域(コミュニティ)の強みは何か。弱みは何か。
  • 社会から高い評価、信頼を得ているか。
  • 対象とする企業に関するリストの情報収集のノウハウはあるか
  • 企業を説得するマーケティング力はあるか(専任の営業機能を遂行する人材の配置)

3.企業の特性と責任者の性格に合った提案の工夫を
(4月15日号の「NPOのマーケティング1」と合わせて、ご参照ください

個々の企業の基本情報を事前調査し、ニーズや問題点を粘り強く聞き出し、自己の組織の特性やサービスの特徴・付加価値などを勘案し、企業の組織風土や文化、責任者の性格にあった企画案や解決策の提案活動を行います。責任者から、こんな提案が欲しかったといわれるようなアイディアや企画の提案と提案の仕方が必要です。

また、企業は時々刻々変わる環境変化に対応し、その変化をチャンスと捉え、着実に進化しています。NPOの提供するサービスに対する満足度は時間の経過や環境の変化とともに、確実に低下して行きます。企業とのより良い関係を維持するために、それまで以上の営業努力と組織をあげてのアフター・マーケティングが必要です。即ち、良い意味での〔緊張関係の維持〕です。

4.常に組織の使命は何かを問い、組織の使命で判断する

時に、企業から直接、あるいは、中間団体やエージェントのような組織から、紛らわしい魅力的な提案が持ち込まれことがあります。ここで重要なことは、いかに魅力的だからといって、利益を得るために、使命や事業目的をおろそかにしないことです。自己の使命を損なうような業務は、きっぱりと断ることが必要です。

NPOの使命は、企業や行政では解決が得られない社会的・公共的な事業を遂行することにあります。私たちは、常に、組織の使命を問い、安易な妥協を排し、社会問題の解決を組織の使命で判断するという強い自覚こそが、社会からの信頼を得る全てであることを銘記すべきです。

 


ページはここまでです。

<<このブラウザでは、左側ナビゲーションメニューを印刷致しません。>>